木暮太一です。
今回は、出版業界の裏事情について解説していきます。まずは著者に関してです。
『出版業界はこうして成りたっています~著者編~』

出版業界として、

  1. 著者が出版社に対して原稿を出し
  2. それが印刷されて本の形になると取次という問屋さんに行きます。
  3. 取次が各書店に流通して、本が書店に届く

という流れになっています。それを聞くと、著者は単純に「原稿を書いて編集者と打ち合せをして、内容を書けばいいんでしょ」と思うかもしれません。たしかにそれはそうです。ただ、ここには皆が知らない裏事情というか、あまり出回っていない話があるんです。そういった裏事情の代表的なものを挙げました。今回は著者の印税です。

著者の印税。まあいろんな貰い方があるんですけれども、大きく分けて3パターンあります。

まず1つめ。『刷り印税』という形式で印税をもらうパターン。

刷り印税とは、昔から続いている伝統的な印税の払われ方で、「本を刷った時点で著者の印税が払われます」という意味です。本を刷ります。最初は4000冊刷ったとします。そうしたらその4000冊は、売れなくても著者には印税が発生します。これが「刷り印税」のスタイルです。

そして2つめ。『実売印税』です。

実売印税というのは、「刷っても売れるまでは印税払いませんよ」っていう感じです。例えば4000部刷って、あるときで在庫を締めるんです。その上で残っている分を差し引いて売れた分を計算して「じゃあこのくらい売れたからあなたの印税これくらい払いましょう」って計算するのが実売印税です。

そして3つめ。3つめは『原稿料』という支払いの仕方。

原稿料は「何部刷ってもどのくらい売れても関係なく一括で払いますよ」という支払いのスタイルです。原稿料の相場は20万~50万くらいです。そしてそれは「本が売れても売れなくても、この後追加の支払いはありませんよ」って意味です。

刷り印税、実売印税、原稿料の3つがあるってことをまずは覚えておいてください。

印税のもらい方は、誰が決める?

印税のもらい方は、「刷り印税」、「実売印税」、「原稿料」の3つがあります。まずはそれを覚えておいてください。で、問題は自分の印税はどの方式になるか、ですよね。

結論から言いますと、「出版社次第」です。出版社によって刷り印税なのか実売印税なのか原稿料なのかがほぼ決まっています。なので著者は選べません。著者が「わたし刷り印税がいいから刷り印税にして下さい」って言っても、「うちは原稿料でしか支払わないので原稿料でお願いします」って言ってきます。逆に「わたし実売印税の方がいいから、刷り印税じゃなくて実売印税に変えて下さい」って言っても向こうはOKしません。

出版社は出版社ごとにいろんなやり方があって、経理の体制とか在庫のカウントの仕方とか、いろんなものを整えているわけです。
なのでこちらがなにを言っても、印税の払われ方――支払い形式が変わることはまずないと思って下さい。

印税率はどのくらい?

そして、各印税のパーセンテージ=印税率ですね。「定価に対して何パーセント分払いますよ」っていうのが印税率です。この印税率はMAX10%です。

MAX10%の印税率で下は0%まであります。0%ってどういうこと? タダ働き? って思うかもしれませんね。はい、その場合もあります。「初版分は印税支払いません」とかあとは「増刷分は印税支払いません」とか、そういうのもあるんですよ、最近。さらには「印税は、一切発生しません(払いません)」っていうパターンもあります。

これも出版社によって基準が色々違います。ただ、印税の支払い方式と違って出版社として固定ではないんです。出版社は著者を見て変えてきます。刷り印税か実売印税かは出版社によって固定なのでほぼそれは変えることはできないです。ただし、印税率は結構変えてきます。

「この人けっこう実績あるから印税率は10%」「この人は新人だから印税率は3%」
ってことですね。

じつは、ここは少しだけ交渉の余地があるんです。ベテランになってくると印税率を交渉することもできますけど、ぼくはあんまり交渉はしてこなかったですね。基本的に向こうから「何%でお願いしたいんですけど」っていう提示があって、「まあまあ、いいっすよ」みたいな感じでそのまま済ますことがほとんどでした。

ただ、この印税率って最後の方に言われるんです。最後の最後の最後で「じゃあ印税に関して、じゃあ何%で、こういう支払い方になりますけどどうでしょう?」って感じ。本ができあがる直前に言われることが多いです。なので、もしそこで「イヤだ」って言ったら、「『イヤだ』って言ってもこれ止めらんないし。本当にイヤだったら出版止めて、今までの努力が全部水の泡になりますけどいいですか?」みたいな感じになってしまう。ここでもめると喧嘩別れになるしかないんですよね。

これは出版業界のすごく悪い癖ですけれども――とにかくお金の話を先にする出版社はすごくレアケースで、ほとんどの出版社が最後の最後の最後まで何も言いません。なので著者は「どのパターンが来るか」そして「印税率が何%か」、知りたい人はあらかじめ聞いておきましょう。

最初に聞いても別に怒られるような話ではありません。特に印税の支払い方法に関しては、聞いたからと言って向こうは気分を害するわけでもなく、「こいつがめついな」って思うことでもなく、特に問題ないので。それは最初に聞いてもいいと思います。で、印税率に関しては「何%くらいでイメージしておけばいいですか?」っていう聞き方だったらいいと思います。

最初から「印税率は10%でお願いします」って言うと、すごい要求が強い、押しが強い著者に思われるので、その時点で話がなくなるっていうのもあり得ますからね。

このお金の話は日本人は得意じゃないですから、気をつけていきましょう。