こんにちは、木暮太一です。ぼくは日々、商業出版のコンサルティングを実施しています。ぼくの受講生さんは7割が商業出版にこぎつけますが、みんな最初から自分の「確固たるコンテンツ」があったわけではありません。ぼくと一緒に作っていった感じです。
ぼくが主催している出版塾の講義では、商業出版に向けての具体的な段取りを教えています。受講生がその場で出版企画書を仕上げることができ、早い人は当日から出版社にアプローチを開始できます。
そして、ぼくの出版塾に入塾される方からたまに「講義を聞くまでに何を準備しておけばいいですか?」と質問されます。「これをやっておかないと講義についてこれない」というようなことはないんですが、事前に考えておいてもいいことはあります。
今日のブログはそんな「事前準備」に関してです。いつものようにYoutubeでも解説していますので、併せてご覧ください。
今回は、「著者が企画を作るとき、自分のコンテンツをどう切り出せば良いのか」という話をします。実は結構簡単なことなのですが、言われないと気づかないものです。
これまでモヤモヤと考えていたことが、「そんなことで良かったんだ!」という発見に変わると思います。ぜひ最後までお読みください。
まず、著者が考えてしまいがちな「あるある」企画のうち、行き詰まるパターンを2つ挙げます。
1つ目。「情報/知識を与えようとする」
つまり、自分が知っている情報を本に書こうとする。言い方を変えると「本にはこんな知識を書こうかな、こんな情報も盛り込もう」とリスト化してしまうことです。これはなかなか苦労する切り口です。
「え、何がいけないの?」と思いますよね。自分が知っている情報は、まだ世の中に広まっていない。だからこの情報について本に書こう、と考えるのは自然なことです。
この考え方、あまりよくないです。100%ダメなわけではありませんが、8割9割が失敗します。なぜなら、情報は「みんなが知りたい」という場合のみ有効だからです。
例えば「暗号資産」に関する情報があります。
「暗号資産で稼ぐ方法」「こうすれば暗号資産でもうかる」「次に来る暗号資産は仮想通貨/ビットコインだ!」といった情報がありますね。でもこれらの情報が意味あるものになるのは、みんなが「暗号資産でお金を稼ぎたい」と思っているときだけです。
みんなが知りたいと思う情報でなければ、いくら最新の情報でも、いくら世の中に広まっていなくても、必要とされません。
例えば、ぼくは昔、バレーボールを一生懸命やっていました。もともと超体育会系で、スポーツはいろいろやっていました(今は作家でメガネなので、文系・インドア派、と見られますが笑)。
でも、ぼくがバレーボールに関する情報を語ったところで、誰も聞きませんよね?
ぼくがバレーボールにいかに詳しくて、新しい戦略とかテクニックを紹介できるとしても意味がありません。
著者自身は
「私はこんな情報に詳しい」
「私が知っていることは最先端だから、これを世の中に伝えたい」
と考えてしまいがちです。でもこれは、ともすると新知識の押し付けになってしまうパターンです。自分にとっては価値あることでも、周りの人は求めていないかもしれない。その点に気をつけましょう。
2つ目。「相手のマインドを変えようとする」。
本を書きたいと思っている人がつい持ってしまう発想です。これも、結構やりがちです。
例えば、アンハッピーな人がいます。そういう方は不幸な環境にあることも多いと思うのですが、一方でその人の考え方そのものが不幸を導いていたり、不幸の源泉だったり、ということも考えられますよね。
そういう「アンハッピーな人」を見て多くの「著者」は相手の考え方を変えようとしてしまいます。
「あなたの考え方を変えなければいけません」
「考え方を変えさえすれば、あなたの望む結果が得られます」
と言いたくなるわけです。
あるいは、何かを勉強するときにも「テクニックではなくマインドを変えましょう」と言ってしまう。
気持ちは良くわかります。そして、それが正しいとも思います。しかし「マインドを変えてください」と言われても、人は受け入れないんですね。
人はマインドを変えることを一番イヤがります。それが正しいとわかっていても、相手はついて来ないのです。
あなたもイヤではありませんか? 例えば、ダイエットができなくて悩んでいるとします。そんなとき、どうすればやせられるか、何をしたらやせるのか、を考えると思います。つまり「やり方」を探しますよね?
そして、スポーツジムへ通うことにしました。そしたら行った初日に「あなたの考え方がいけないんです。考え方自体を変えてください」と言われたら、どう思いますか? なんとなく説教された気がして、イヤな感じになりませんか?
「あなた、マインドを変えた方がいいですよ」と言われたら、話を聞きますか?
あなたが絶対的に信頼している人だったら「変えてみようかな…」と思うかもしれません。でも、知らない人から言われても反発するだけですよね?
あなたのことを教祖的に慕っている人でなければ、マインドを変えるという話を聞いてもらえることはない、ということです。
「マインドを変えましょう」「考え方を根本から変えましょう」と本に書くのは相当難しいことです。ですから、マインドを変える、という企画はガマンしましょう。
今紹介した2つの方向性(「情報や新知識を与える」「マインドを変えようとする」)、このパターンは行き詰まります。
ではどうすれば良いのか? あなたが考えるべきは「How-to(ハウツー)」です。ハウツーというと小手先のテクニック、ととらえるかもしれませんが、そうではありません。
例えばダイエット。みんなが知りたいのは、ダイエットができるマインドではなく、ダイエットするやり方(=ハウツー)です。
勉強なら「勉強ができるようになる方法」、お金だったら「稼げるようになる方法」
つまり、「こうすれば成功する」というやり方が知りたいのです。
ご自身が何か悩んだ時も「解決する方法」を知りたくなりますよね。もっと言うならば「すぐに解決できる方法」を知りたいですよね。著者としてはそれにこたえなければいけないんです。
ところが、多くの人が、ここで再びつまずきます。ハウツーのつもり(でも実はそうではない)になってしまうんですね。
またダイエットを例に出しますが、
「ダイエットするためにはどうすればいいですか?」と聞かれて
「バランスの良い食事を摂りましょう」と答えてしまいます。
これではハウツーになりません。
バランスがいい食事をとればいいというのは、その通りだと思います。でもそれを聞いても「バランスの良い食事とは何か」「どうすればバランスの良い食事を摂ったことになるのか」ということがわかりませんよね。
みんなが知りたいのは、理屈はともかく、「この場で」「今すぐ」「何をすればいいのか?」という話なのです。
つまり、あなたが語るべきは「ロジック(理屈)ではなくアクション(行動)」です。
「まず右手で(利き手によっては左手で)箸を持ってください、次に〇〇をこれぐらいの量を食べてください、それから△△は何グラム、順番は…」という話をすることなのです。
読み手は、
「理屈はなんだか良くわからないけど、本のとおりにやったらできた!」
となる。これが大事なんです。極端な話、なぜこうするのか、読み手が理解できなくても良い。何をするかがわかれば良いのです。
繰り返しになりますが、多くの著者は相手のマインドを変えようとしてしまいます。
「そんな細かい手順を示しても意味がない。本質が変わらなければ、その人は絶対変わらないから」と考えるからです。
気持ちはわかりますが、言われたところでできません。あなたが示すべきは「手順」です。
奥義書みたいな感じで
1、〇〇してください
2、△△してください
3、□□してください
と、超・具体的に並べることです。
それがあなたの企画になります。
ぼくは今まで著者として60冊本を出してきました。出版社を経営して18年にもなります。ぼくの主宰する出版講座は受講生を1000人以上輩出しました。著者も数百人、生まれました。出版企画でいえば、たぶん5~6000本は見ていると思います。受講生の企画を見ていると、通る企画はこのハウツーがちゃんと説明できています。そういう企画はどんどん通って、どんどん売れていきます。
みんな「ハウツー」に焦点を当てたから成功しているんです。
自分が本当に言いたいことが、マインドを変えるとか、この知識を世の中に広めたい、ということであっても、本の中ではちょこっと書くくらいがちょうど良い。もしその本が認めてもらえたら、次の本でそれをメインに書けば良いんです。
まずはハウツーで、読み手にやってもらう行動リストを示しましょう。それがあなたの企画になります。