こんにちは、木暮太一です。ぼくは1998年、19歳から作家活動をし、2004年から出版社を経営しています。出版業界に身を置いて四半世紀になりました。出版業界にはいろんな流れはあるものの、ずっと変わらないことがあります。

そのずっと変わらないものに目を向けて企画を作ると商業出版が実現しやすくなります。今日はその「ずっと変わらないもの」についての話です。

ぼくが主催している出版塾では受講生の7割の方が「出版できた」とアンケートに回答してくれています。なぜこんな高確率で商業出版が実現するかといえば、それは編集者に求められる切り口を提示しているからです。この切り口の作り方がめちゃ大事。なので、ぜひ皆さんにも共有したいと思っています。

ということで、今回は「出版社に評価される企画の切り口ベスト5」をお届けします。

ぼくらは自分のコンテンツを持っています。けれども、そのコンテンツをそのまま伝えれば企画が通るわけではありません。企画には『切り口』が必要です。そして同じようなことを語るにしても、その『切り口』によって、良い企画になったり、そうでなくなったりします。特に「出版業界が評価する切り口」があります。まずはそれを知ったうえで自分の企画を作ることが大事です。

出版業界では、年が明けると売れる本の内容がガラッと変わることがあります。

「去年まで売れていたのに全然売れなくなった」
「全く新しいテーマが注目を集めるようになった」

そんなことが毎年起こっています。

その一方で、売れ行きが全く変わらないテーマがあります。その普遍的なテーマに焦点を合わせることが、出版実現性を高める一つのやり方なので、そのノウハウをぜひ身につけてください。

ということで、「企画が高く評価される切り口」ベスト5を発表します。動画でも解説していますので、動画の方が見やすい方はこちらからどうぞ↓

それではいきます。まず第5位! 第5位は「ダイエット」です。ダイエットに関する本は昔から売れています。出版業界もダイエットに関する本の企画を探しています。あなたのコンテンツが使えるのであれば、ダイエットの切り口から表現してみることが大事です。

「〇〇すると痩せる」「△△すると体重が減る」

そういう企画が作れたらすごく良いと思います。

とはいえ、ダイエットの本はめちゃくちゃたくさん出ています。ただ単に「痩せますよ」と言っても、もはや注目してもらえません。大事なのは『細分化』すること。的を絞ることです。

「全体的に痩せます」では全然ダメ。それよりパーツを絞って、「お腹」「背中」「足」だけにする。もしくは、「〇〇する“だけ”で痩せますよ」と手法を限定する。

「いろんなことをバランス良くやって、バランスの取れたキレイな身体になりましょう」というのがダイエットの本質かもしれませんが、出版業界ではそういう本は評価されません。とにかく『的を絞る』ことが大事です。

次に、第4位。第4位は「お金」です。お金にはみんな関心がありますよね。「お金を増やす」「お金を節約する」「お金を稼ぐ」。こういうテーマは、もう何十年、もしかしたら何百年も前からずっと語られていることかもしれません。そしてダイエットと同じように、いろいろな本がたくさん出ていますから、それに負けないような本を出さなければいけないわけですね。

ではお金に関して『よそに負けない』本とはどういう意味か。多くの人が間違えてしまうのが「より詳しい知識」「専門的な知識」と考えること。

例えば「私はiDeCoの税制に関して専門的な知識が豊富だから、これを世の中に伝えたい」と言われても、内容が難しくてなかなか興味を持てません。

意味がないコンテンツと言っているのではありません。「難しすぎてぼくらにはわからない」という話です。特にお金や数字について語る場合、一般の人がすぐにわかるように、やさしく語らなければいけない。それがすごく大事なポイントと思います。ただし、初歩的なことを語ればいい、ということではありません。

大事なのは「再現性」です。例えて言うなら、「こういう専門知識を身につけたら1億円稼げます」ではなく、「簡単な知識を身につけるだけで10万円得られます」という方が好まれます。

「仮想通貨の〇〇」「マイニングで△△」というのは難しすぎて、一般の人はついて行けません。それよりも「初心者でもほぼ確実に10万円稼げます」という方が使いやすい。専門的な本では大衆受けしません。評価される切り口を狙うのであれば、やはり一般向け、初心者向けの切り口が必要だと思います。

さて、ここまで第5位「ダイエット」、第4位「お金」と紹介しました。「当たり前じゃないか!」と思うかもしれません。でも、ここが大事なポイントです。裏を返すと、これが1位と2位“ではない”ということです。

多くの方が自分の企画を作ろうとすると、ダイエットやお金には需要があるだろうと感じます。もちろんその通りです。けれども、そう考えて企画を作る人たちもたくさんいるので、ライバルが多くて埋もれてしまう可能性があります。

ではどうすれば良いか。需要はありつつ、ライバルが少ない切り口を提示することです。

ということで、第3位。第3位は「メンタル系」です。メンタル系の本も昔からたくさん出ていました。ただ昔は、「モチベーションアップ」「やる気を出す」「もっと上を目指す」など、メンタルを強くするための本が多かったです。

今は違います。今は、「マイナスをどうリカバーしていくか」という本が多いです。例えば、傷つきやすい人、自分に自信がない人に「この本を読んでそこから脱却してください」「自信がない苦しさから抜け出してください」と、マイナスを少しでも和らげるような企画が求められています。

もし、あなたのコンテンツが「メンタルアップ」「弱さ克服」「苦しさからの脱却」という内容で使えるのであれば、その切り口で企画を作ることはすごく有益だと思います。

今、世の中がいろいろ大変な時期です。そんなときに、頑張ろう、もっと頑張ってもらおう、では苦しいですよね。メンタルが強くない人に対しては「頑張ろう」という言葉自体が苦しくなってしまいます。

そのように、ちょっと弱っている人向けに、自分のコンテンツがどう使えるか、ということを考えると良いのではないかと思います。

続いて第2位。第2位は「健康」です。健康は鉄板中の鉄板ですね。鉄板ネタの割には注目されていないかなと思います。どんなマーケットでもそうかもしれませんが、出版マーケットもシニア層中心になっています。そしてシニア層の興味・関心は、やっぱり総じていうと「健康」なんですよね。

ただし、この健康とは、『心』ではなく『身体』の健康です。「膝の痛みがなくなる」「腰痛がなくなる」「ラクに歩けるようになる」、そういったものですね。自分のコンテンツがそれに使えれば、かなり良い切り口になると思います。

そして、いよいよ第1位。第1位は結構意外かもしれません。出版社がずっと前から求めている切り口1位は、「文房具」です。これは、ほとんどの人が注目していません。でも実は、ベストセラーになった本をたくさん知っている、というテーマではないかと思います。

文房具? どういうこと? って思いますよね。「文房具の本を出せってこと?」と。そうではありません。「こういうノートを使いましょう」「こんなふうにメモを取りましょう」「付箋はこう使いましょう」という話です。

みなさんも記憶にあるかもしれません。「こんなノートを使えば頭が良くなる」「こういうメモの取り方をすれば夢がかなう」「こんなふうに日記を書くことで自分の目標が達成できる」などなど。

強調されるのは「こういうノート“さえ”使えば」「このペンを使い“さえ”すれば」「こんな手帳“さえ”使えば」ということですよね。そう言われると、できそうに見えるんですよね。

実際にはいろいろやる必要があると思いますが、「これ“さえ”使えば成果が出せる」と思えて、手に取りやすいんですよ。ぼくもそういう本を見て、モレスキンのノートを買ったことがあります。「モレスキンのノートを使えばこんなふうに夢がかなう」という内容だった気がします。冷静に考えたら、ノートを買っただけで夢がかなうわけがないんですが(笑)。

でも、「ノートを使って〇〇すれば、自分の考えが整理されて、〇〇できて、結果が出る」と言われたら、そうか、と感じるんですね。ということで、自分のコンテンツに文房具を掛け合わせると良い企画になります。

例えば、コミュニケーションのコンテンツを持っているなら「こういうふうに相手に伝えましょう」というだけではなく、「こういうノートの取り方をしましょう」「こんな付箋の書き方で伝えましょう」と表現してみましょう。

文房具がからむと、出版業界の人たちは売れるイメージを持っています。だから、文房具との掛け合わせでコンテンツが来ると印象がめちゃめちゃ良い。話も進みやすくなります。

もちろん、その後もノウハウに沿ってきちんと進めなくてはダメですが、第1関門を突破しやすくなるという点で、トライする価値はあります。ということで、今回は

「編集者の好む切り口ベスト5」をお伝えしました。

第5位「ダイエット」
第4位「お金」
第3位「メンタル」
第2位「(身体の)健康」
第1位「文房具」

この切り口から、自分のコンテンツを考えてみてください。これからも、あなたの出版実現に役立つ情報を出していきます。

ということで、また次回!