こんにちは、木暮太一です。今日お伝えしようと思っているのは「本の読者対象」についてです。ぼくは長年、商業出版を実現させるための出版塾や、出版コンサルをやっています。これまで5000以上の出版企画をコンサルしてきましたが、かなりの著者が陥ってしまう「あるあるの落とし穴」があります。それを説明しますね。

本の読者対象の設定方法に関して、出版社側が思っている「常識」と、一方で著者がやってしまう「あるある」を紹介します。

まず、出版社が何を思っていることを説明しますね。出版社は「たった一人の読者を想定してほしい」と思っています。そう明言する編集者もいますし、口に出しては言わないけど実際にはそう思っている編集者はかなり多いです。

ただ、これ聞くと著者の中で疑問が出てくるんです。

本の対象読者が一人でなきゃいけないってことは、本が1冊しか売れないということじゃない? そんなニッチな本でいいの? と感じるんです。

そう疑問に感じるのは自然なことですね。だって「たった一人の読者を想定してください」と言われるわけですから。

ただ、意味合いが違うんです。編集者がいう「たった一人の読者を想定してほしい」とは、何かメインディッシュを決めてください、という意味です。

コース料理では、メインディッシュ以外にもいろいろ料理が出てきますが、「メイン」を前面に打ち出して紹介しますよね。それと同じようなイメージで、「この本で語るメインディッシュは何ですか? 一つに決めてください」という意味です。

一般的に、著者はいろんな話を盛り込もうとしてしまいます。

お金持ちになり
恋人ができ
ダイエットにも成功して
自分の好きな仕事をしながら
世界中を飛び回れる方法を書きたい

と語る著者はとても多いです。

実際にその方法をすべて語れるのかもしれません。でもそのネタを全部書いてしまうと、1テーマの情報が薄くなります。本1冊は150~250ページ程度でしか作れません。それ以上ページが増えると、本として分厚すぎて買ってもらえなくなります。無限にページを増やせるわけではないのです。だから、テーマが複数あればそれだけ1テーマに割けるページ数が減りますよね。そして、伝えられるノウハウ量も減ります。

つまりは、「広く浅い本」になってしまうわけです。

著者としては、「いろんなことを身に着けられるお得な本」と考えてのことかもしれませんが、編集者はそうは思いません。どのテーマも「どっちつかず」の浅い本に見えてしまいますし、場合によっては「1つネタで書き切る自信がないから、たくさん話題を入れようとしているんじゃない?」と思われます。つまり「浅いノウハウしか持っていない著者」だと思われる可能性があります。

そうなると、出版実現は難しくなります。実際には、本にはいくつかのテーマを書きます。ただし、メインディッシュは必ず1つにしなければいけません。それが編集者から評価される企画にするための必須ポイントです。