いい提供者になるためには、その道でいい消費者にならなければいけない。いい消費者とはお店の人にも丁寧に接するとか、横柄な態度をとらないとかそういうことじゃなくて、消費者として商品の目利きを上げていかなければいけないということです。
ぼくはそれを「プロの消費者になる」と表現しています。
ぼくは普段、商業出版をする方法を伝える出版塾を主宰しています。この「プロの消費者になる」という話は出版でもとても大事な視点です(商業出版に限らず、何にでも当てはまると思います)。
ビジネスでうまくいく人は、消費者として多くの経験を積んでいます。いろんなものを買い、いろんなところでいろんな体験をしています。だからこそ現状の商品で改善しなければいけないことがわかるし、この値段だったら買う、こんなに高いんだったら買わない、がわかるんです。
テントに入るだけで3000円というイベント
先日、ファミリーが集まる広場で催し物がありました。グランピング体験ができるようで、テントやらハンモックやらが展示されていたんだけど、びっくりしたのがそのテントに入る「グランピング体験」が1時間3000円だったこと。
テントに入るだけで、1時間3000円ですか。ちょっとお客さんをバカにしてませんかね。テントの中に入って何をするわけでもなく、1時間過ごす権利なだけです。テントの中には何もないので1時間過ごすことはできないでしょう。もって10分かなと思います。
その催し物の近くにはスーツを着たおじさんたちが5、6名視察に来ていました。話の内容から察するに、本人たちはグランピングに特に興味はないようです。やったこともないみたいだし、これからやろうともしてない。だからこういうイベントになっちゃうんですよね。
このおじさんたちが悪いというか、まったく興味がないことをなんとなく仕事としてこなしているのがいけないと思うんですよね。
ぼくが恩師から教えてもらったこと
ぼくが富士フイルムにいた時、写ルンですも写真の現像もタダでした。写ルンですはタダでもらえたし、現像もタダだったから、在籍中は写真にお金を使わなかった。会社としては「たくさん写真に触れて勉強するように」っていう主旨だったと思うし、ぼくとしてはとてもありがたかったです。
でも今から考えると、この時、写真にお金を使わなかったからぼくは写真業界で大成しなかったんだと思う。自分が作っている商品に対して、自分はお金払ってないんだから、そりゃ提供者として成功するわけがないですよね。
どういう感じにしたらお客さんが喜ぶかも理解できないし、いまのお客さんがどこに不便さを感じて、どこに不満を持っているかもわからない。
自分はタダで使っているから、仮に不便さがあっても気にしない。だってタダだもん。自分が作っている商品を自分で買うくらい(買いたくなるくらい)じゃないとお客さんに選んでもらえないですよね。
当時、ぼくの恩師は、写真屋さんでお金を払って写ルンですを買い、写真屋さんでお金を払って現像していた。会社でやればタダなのに、わざわざお金払って「消費者」になってた。彼は今や写真業界の第一人者になりました。
ビジネスをやるんだったら、まずは自分が消費者にならないと。そしてプロの消費者を目指さないと。じゃないとお客さんが欲しいもの、買う価格なんてわからないです。
見た目は愛嬌たっぷりで、ぼくもあだ名で呼んでるんだけど笑、彼から教えてもらったことは本当に大事なことです。その恩師とは今も定期的に飲みに行ってます。コロナが明けたらまた飲みにつれてってもらおう。