こんにちは。今回は、本を出すまでの流れをご紹介します。ぼくが出版のプロデューサーとして、受講生の出版アドバイスをする際、まずこの流れを把握してもらっています。
本を出したい方は、たくさんいます。 皆さん、自分の本を出したいと思って、一生懸命頑張ります。 けれども、そのやり方がだいぶ間違っている。業界からすると、「それをやっちゃ駄目だよ」っていう話が、結構あるんですよね。
そもそも、本を出したいと思ったときに、
- 何から手をつけなきゃいけないか
- どういう順番でやらなきゃいけないか
などが知られていないんですよ。 なので皆さん、自分で思いついたことを、そのままやってしまうのですね。 もちろん自分が「これかな」と思ったことを行動に移すってことは大事なことです。 でも、それが間違っていたら意味がありません。
そして、「正しいか、間違っているか」は、皆さんが考えてはいけません。 出版業界、出版社側が正しいと思うことを、やらなきゃいけないわけですよね。 ぼくは作家であり、出版社の経営者です。そして25年くらい出版業界にいます。 この経験から皆さんにお伝えできることを、スライドを使って解説する動画を作りましたので、そちらで案内します。
これから、商業出版決定への段取りを説明します。
まずは全体のスケジュールです。ざっくりと、以下のような流れで進んでいきます。
- 出版企画書を書く
- 編集者にアプローチする
- 編集会議を通過させる
- 執筆をする
- 編集、印刷、流通
それぞれの過程について詳しく解説していきます。ぼくらが本を出そうと思ったときに、何をどの順番でどういうふうにやっていかなければいけないのか、その全体像をつかんでください。
Contents
流れ①出版企画書を書く
商業出版を実現させるために、最初にぼくらがやることは、「出版企画書を書く」ということです。 出版企画書がないと、出版社は何をしていいかわからないんです。企画書を作らずに「出版したいんです」っていうことは、飛び込み営業に来た人が、何も商品を持っていない、みたいな感じなんですよ。 商品を持たずに飛び込み営業に来られても、何を買っていいのか、何の話をしていいのかわかりませんよね。
ぼくらは、自分のコンテンツを企画書の形式にまとめて、「これ、どうですか?」と相手に営業しなければいけないのです。 まずは、出版企画書を書きましょう。
出版企画書の書き方についてはこちらの記事で解説しています。
流れ②編集者にアプローチする
企画書が書き上がったら、次は編集者にアプローチします。 当たり前ですが、作った企画書を自分で眺めていても、出版につながりません。 その企画書を、編集者に見せなければいけないのですね。 編集者にアプローチすることで、初めて出版を検討する土台に乗ります。
そして編集者といろいろ話をして、いろいろ「この部分はこうしてほしい」と宿題をもらいます。それがなんとなく形になってくると、編集者が「じゃあこれでいこう」とGOサインを出し、次は出版社内の会議にかけられます。 これを、編集会議とか企画会議といいます。
流れ③編集会議を通過させる
編集会議を通す段階です。社内の稟議を通す感じですね。 編集者は、「この著者と、こういう本を作りたいのですが、いいですか?」と社内で決裁を通します。
この編集会議は、編集者が行います。著者は一切会議に参加できません。編集会議に行って「著者の私が編集者に代わってプレゼンします」というのはナシです。 編集者が、社内で自分の上司なり、営業部とか経営者に対してプレゼンする、それが編集会議です。
流れ④執筆をする
その編集会議を通過すると、「あなたの本が、うちの出版社から出ることが決まりました」と編集者から連絡が来ます。これがいわゆる「出版決定」のタイミングです。出版が決定すると、次は執筆です。
流れ⑤編集、印刷、流通
執筆が終わると、今度は編集者が原稿を編集します。 編集が終わると、印刷と流通の過程に入り、それが書店に行く。これが出版の全体像です。
出版までの期間はどれくらい?
出版社が決まってから書店に並ぶまで、「半年以上はかかる」と覚えておきましょう。
その前段階である「流れ①出版企画書をどれくらいで書けるか」、それは人によって違います。そして「編集者がどれくらいで流れ③の編集会議にあげるか」、これも場合によってもう全然違うんですよ。 早ければその週に会議に取り上げてくれますし、遅いと1年後とかにもなったりします。
一方で、ある程度スケジュールが決まっているのが、「流れ④執筆」「流れ⑤編集、印刷、流通」の部分です。
「あなたの本がうちの出版社から出ることが決まりました」と、出版が決定してから、その本が書店に並ぶまでどのぐらいかかるか。 まず、「執筆」のステージ、これは3カ月ぐらいで終わるとみられています。 実際に皆さんが本の原稿を書いていくわけですが、執筆は「だいたい3カ月ぐらいで終わるだろう」と、出版業界では思われています。
ここ、気をつけてください。
「3カ月ぐらいで執筆が終わるだろうな」と思われているということは、3カ月ぐらいだったら、編集者は「そろそろ原稿が来るだろうと待っている」、ということですからね。 3カ月以上たって、著者が全然原稿を出してこないと、編集者は「この人は、もう出版に興味がないのだ」と思います。
そこで編集者がやる気をなくすこともあります。
もし、執筆に想定以上の時間がかかるのであれば、あらかじめ編集者に伝えておきましょう。編集者は3カ月だったら待っていますので、もし半年かかるのであれば、それを言っておかなければいけません。 また、執筆に着手するタイミングが遅れる、「向こう2カ月は全く手がつけられなくて、その後に書き始めます」という場合、それは編集者に言っておかなければいけないのです。
次に著者が書いた原稿を編集者が「編集」しますが、これはだいたい2カ月ぐらいかかります。これも相場なので確定ではないのですが、早い場合でも1カ月半ぐらいはかかります。 遅い編集者だと、もう半年とか1年とかざらでかかります。だいたいイメージとしては2カ月ぐらい見ておけばいいかなという感じですね。
そして「印刷と流通」は、1カ月は物理的にかかります。ここを早めることは、ほぼできません。
ということは、編集会議が終わってから、書店に並ぶまで ・執筆に3カ月 ・編集に2カ月 ・印刷と流通に1カ月 合計6カ月かかるということなのです。 言い方を変えると、「あなたの本が、うちの出版社から出版されることが決まりました」と連絡を受けてから、実際に本になるまで、半年かかるということなのです。
「すぐに出版!」のスケジュールは難しい
このようなスケジュール感で出版業界を動いています。これが標準です。 6カ月、7カ月ちょっと、遅くて8カ月、それぐらいはかかるんですよ。 ですので、「私の本をすぐ出したいから、2カ月後に出してください」というのは、無茶なんです。無理難題を言っているのと同じなんですよ。
出版業界は、自分たちの相場観から、著しく外れた考えを持っている人に対して、あんまり忍耐強くないというか、寛容ではありません。「そんなに無茶なことを言うんだったら、もういいです」と、すぐ切られてしまいます。
こちらは知識がないだけで、別に悪気があって言っているわけではないのですが、「そんなの無理に決まっているじゃないですか」「何を言っているんですか」みたいな感じで怒る人もいるので、ここは相場観として押さえておきましょう。 出版業界の常識として、企画が通ってから、実際に本になるまで、半年以上はかかるものだということを、まずは押さえてください。 以上、出版までの流れを解説しました。 皆さんが思っていることと少し違うかもしれませんが、これが出版業界の正しい流れです。 本を出したいのであれば、まずはこの流れに従うということを考えましょう。