出版の二つの選択肢
本を出版する方法として、従来の「商業出版」と近年急速に普及している「Kindle出版」という二つの選択肢があります。ぼくは両方の経験があり、それぞれに魅力と課題があると感じています。「出版したい」と思ったとき、どちらを選ぶべきか迷う方も多いでしょう。このブログでは、商業出版とKindle出版のメリット・デメリットを比較しながら、あなたにとって最適な選択肢を考えるヒントをお伝えします。
※少し前までkindle出版はデメリットの塊でしたが、状況が変わってきています。相変わらず商業出版の方が圧倒的にメリットが大きいですが、kindle出版も選択肢に入れた方がいい時代になっています。今回はその前提で書きますね。
商業出版のメリット:ブランド力と信頼性
商業出版の最大の魅力は、やはり「信頼性」です。大手出版社から本が出ると、それだけで一定の評価を得られます。2009年、ぼくが初めて商業出版を実現できた時、「ダイヤモンド社から本を出した人」という肩書きが、講演や執筆の依頼につながることを実感しました。
また、書店に並ぶという物理的な存在感も大きなメリットです。ネット全盛の時代でも、書店で手に取られる機会があるというのは、作家としての知名度向上に大きく貢献します。ぼくの経験では、商業出版をした本の方が、メディアに取り上げられる確率も高くなります。というか、商業出版をすれば格段にメディアから取り上げられやすくなります。
商業出版のプロセス:出版社とのコラボレーション
商業出版の魅力は、プロフェッショナルとのコラボレーションにもあります。編集者との打ち合わせを通じて、当初のぼくのアイデアが洗練されていく過程は、時に苦しいけれど非常に価値あるものでした。
校正・校閲、装丁デザイン、マーケティングなど、専門家のチームが一冊の本の完成に関わってくれます。こうしたプロセスを経ることで、自分一人では到達できなかった質の高さを実現できることが商業出版の大きな強みです。
商業出版の課題:狭き門と時間的制約
ただし、商業出版には高いハードルがあります。まず、出版社に企画が採用される必要があり、特に無名の新人には非常に厳しい関門となります。ぼくも最初の本を出すまでに何度も企画を持ち込み、断られた経験があります。
また、企画が通ってから実際に本が出るまでには半年から1年以上かかります。2年以上かかることも珍しくありません。タイムリーな話題を扱いたい場合、この時間的制約は大きなデメリットになります。出版のタイミングは出版社のスケジュールに左右されるため、思ったタイミングで読者に届けられないもどかしさを感じることもあります。
Kindle出版という選択肢:セルフパブリッシングの時代
一方、Kindle出版をはじめとするセルフパブリッシングは、出版の民主化をもたらしました。ぼくがKindle出版を初めて試したとき、その手軽さと即時性に驚きました。原稿が完成すれば、数日のうちに世界中の読者に届けられる可能性があるのです。
技術的なハードルも以前に比べて大幅に下がり、書式設定やカバーデザインもテンプレートやツールの助けを借りれば、素人でも見栄えの良い電子書籍を作れるようになりました。
Kindle出版の強み:スピードと自由度
Kindle出版の魅力は、なんといってもそのスピードと自由度です。企画を通す必要がなく、内容・価格・出版タイミングなどすべてを著者自身がコントロールできます。ぼくは特に実験的な内容や、ニッチなテーマを扱うときにKindle出版を選ぶことが多いです。
また、本の内容を更新したいときも、簡単に改訂版をアップロードできるのは大きなメリットです。商業出版では増刷のタイミングまで誤植すら修正できませんが、Kindle出版ではリアルタイムで改善できます。
Kindle出版のメリット:収益性と読者との直接的なつながり
Kindle出版の収益性も見逃せません。一般的な商業出版の印税率が8〜10%程度(新人だと3%~8%程度もあり得ます)なのに対し、Kindle出版では70%の収益を得られるプランもあります。ぼくの場合、ニッチなテーマの本でも、ターゲットを絞ったマーケティングによって、商業出版よりも高い収益を上げられたケースもあります。
また、読者からのフィードバックを直接受け取れるのも大きな魅力です。レビューやSNSでのコメントをすぐに次の改訂や新作に活かせるため、読者との対話を大切にしたい著者にはKindle出版が向いていると感じます。
Kindle出版の弱点:マーケティングとブランディングの課題
しかし、Kindle出版の最大の弱点は、すべて自分で行わなければならないという点です。特にマーケティングは大きな課題で、膨大なセルフパブリッシング作品の中から自分の本を見つけてもらうのは容易ではありません。
ぼくも最初のKindle本は、まったく売れずに挫折しかけました。SNSやブログ、メルマガなどを活用したマーケティング戦略が不可欠ですが、これらのスキルを身につけるのにも時間と労力がかかります。また、物理的な本がないことで、「本物の作家」として認められにくいという現実もあります。
ハイブリッド戦略:両方の良さを活かす方法
ぼくが最近取り入れているのは、商業出版とKindle出版を組み合わせるハイブリッド戦略です。メインの作品は商業出版で信頼性とブランド力を獲得し、その派生作品や関連コンテンツをKindle出版で素早く展開するというアプローチです。
例えば、商業出版した本の詳細な事例集や、更新が必要な情報はKindle出版で補完するといった使い方が効果的でした。また、Kindle出版で反応の良かった内容を発展させて商業出版の企画にするという逆のパターンも可能です。
成功事例から学ぶ:商業出版とKindle出版の使い分け
成功している著者の多くは、両方の出版形態を状況に応じて使い分けています。ぼくが尊敬する作家の一人は、専門書は商業出版、ハウツー本やショートストーリーはKindle出版と明確に区分していました。それぞれの特性を理解し、コンテンツに合わせた最適な選択をしているのです。
重要なのは、一方を他方より優れているとみなすのではなく、それぞれのツールとして適材適所で活用する視点です。どちらか一方にこだわるよりも、柔軟に両方を活用する方が成功の可能性は高まります。
自分の目標に合わせた選択:何を優先すべきか
結局のところ、どちらを選ぶべきかは、あなたの優先事項によります。ぼくの場合、以下の基準で判断することが多いです:
- ブランド構築や信頼性獲得が目的なら→商業出版
- スピードや自由度を重視するなら→Kindle出版
- 収益最大化が目的なら→内容によって使い分け
- 実験的な内容やニッチなテーマなら→まずKindle出版でテスト
また、デビュー作や代表作となる本は商業出版を目指し、その間の活動を維持するためにKindle出版を活用するというペース配分も効果的です。
まとめ:それぞれの出版方法の役割と将来性
商業出版とKindle出版は、対立するものではなく、補完し合う関係になってきたと言えます。商業出版の権威性とKindle出版の即時性・自由度、両方の良さを理解して戦略的に活用することが、現代の著者には求められています。
将来的には、この二つの境界はさらに曖昧になっていくでしょう。大手出版社もデジタルファーストの戦略を取り入れ始めてますしね。
重要なのは、「出版」という手段に固執するのではなく、自分の伝えたいメッセージを最適な形で読者に届けるという本質を見失わないことです。ぼくも日々試行錯誤しながら、この変化の激しい出版界で最適な選択を模索しています。あなたにとっての最適な出版形態が見つかることを願っています。