こんにちは、木暮太一です。

出版業界で、有名雑誌の編集部が、そのままごっそり会社を辞めて独立し、その雑誌と似たものを作ろうとすることが時々あります。でも、そのほとんどが失敗に終わります。同じメンバーが雑誌を作るので、同じクオリティの雑誌が出来上がっているはずです。でもうまくいかないんです。

そして興味深いのは、その編集部が抜けた元の会社では、作り手がガラッと変わったのにもかかわらず、それまでと同じように雑誌は売れ続け、広告は入り続け、これまでと同じ経営が続けられているということです

同様に、ある会社のエース編集者が独立してフリーになるケースもあります。フリーになって成果報酬になった方が経済的にもメリットがありますし。ただ、フリーになった後も、これまでと同じ成果を出せている人は多くないです。これまでベストセラーを連発していた人でも、フリーになった瞬間それができなくなっちゃうんです

独立する編集部・編集者を否定しているのではありませんし、その方々の能力は素晴らしいと思っています。ぼくが言いたいのは、本や雑誌のクオリティが高ければビジネスとしてうまくいくという発想を変える必要があるということです

ビジネスは商品だけで成立しているのではありません。お客さんにその商品を知らしめる行為、その商品を買ってもらう行為、その書品のお代をもらう行為、そして商品提供する行為、それらがすべて合わさってビジネスになります。

いい商品を作れるからと言って、告知できなければお客さんに買ってもらうことはできませんね。

そういう意味でも、ぼくらは自分のノウハウを商品にした後、その商品を売る流れを理解し、その流れを作れる力を身につけなければいけません。

個人事業主も流れが必須

これと全く同じことが、ノウハウ系ビジネスをしている個人事業主に言えます。自分のノウハウをビジネスにする場合、いくつかの壁に直面します。そしてその直面する壁はだいたいパターンが決まっていて、そしてその壁の乗り越え方も決まっています。

コンサルタントや講師が直面する課題は主にこんな感じです。

  • 自分のノウハウを使って仕事を作る方法がわからない(セミナーをしたいけど、どんなテーマでしたらいいのかわからない)
  • 商品メニューをつくったけど、高くできない(高くしてお客さんが来てくれる自信がない)
  • 集客をしてみるけど、人が集まらない(告知方法がわからない、SNSに書き込んだりするけど、申し込んでもらえない)
  • 徐々に人は集まるようになったけど、トータルの売上が少ない(低単価のセミナーやセッションばっかりやっていて、ひと月の売上が10万円にもならない)
  • 高単価の商材が作れない(そもそも、売れる・売れないの前に、高額商材をお客さんに紹介しようとすると気が引けてしまう)
  • 高単価の商材が安定的に売れない(たまに売れる、でもたまにしか売れないので次にいつ売れるか不安でしかたない)

ほとんどの人がこのルートをたどります。各段階をクリアするたびに成長してはいますが、すぐに次の壁が待っているので、なかなか心が休まらないんですよね。常に「うまくいかない状況」なので、途中で気がめいってしまう人もいます。

かく言うぼく自身もこのルートをそのままなぞりました。ぼくが最初手掛けたテーマは10年以上研究してきた分野で十分な経験もありました。他にはないノウハウだとも思っていましたし、自信をもって提供できるコンテンツでした。でも、かなり苦労しました。

ノウハウのクオリティが高いということと、それを商品にしてビジネスをすることは違うんですよね。経験はある。オリジナリティもある。ですが、だからと言ってそれがビジネスになるわけではありません。

ぼくらに必要なのは「モデル」

ノウハウを使ってビジネスをするためには、自分のノウハウを磨く以外に、ビジネスモデルを理解して、自分で使えるようにならなければいけません。ビジネスモデルとは、簡単に言うと「自分のことを知らない人に、小委品を買ってもらうまでの流れ」のことです。どうやって知ってもらい、どうやって価値を感じてもらい、どうやってその気になってもらい、どうやってお金を払ってもらい、どうやって価値を提供するかという話です。

自分にノウハウがあるといっても、それはまだ商品にすらなっていません。「○○に詳しいです」と相手に伝えても、相手はどう頼んで良いかわかりませんよね。自分のノウハウに切り口をつけてパッケージ化させなければいけません。

商品が作れても、ビジネスにはなりません。商品を持っているだけではお客さんは買ってくれません。知ってもらって、買ってもらわないといけません。売れる商品があるからといって、すぐビジネスになると考えるのは拙速です。自分のノウハウは、自分の商品を作る一部の要素に過ぎないということ、そして自分の商品は自分のビジネスを作る一部の要素に過ぎないことを理解する必要があります。