多くの人にとって、商業出版は夢の一つです。自分の知識や経験、アイデアを一冊の本にまとめ、書店に並べることができれば、その喜びはひとしおでしょう。しかし、商業出版の世界は厳しく、何も勉強せずに実現できるものではありません。
ぼくの経験上、本を出版できる人には、主に二つの条件があります。一つ目は「その道で5年以上のキャリアがある、もしくはそのテーマについて10年以上自分が悩んできた」こと。二つ目は「そのテーマを考えるのが好き」であることです。これらの条件を満たしている人は、商業出版を実現できる可能性が高いです。
商業出版を実現できる人の特徴
1. 専門性と経験を持っている
商業出版を実現できる人は、特定の分野で5年以上のキャリアを持っているか、あるいは10年以上特定のテーマについて深く考え、悩み、取り組んできた経験があります。このような長期間にわたる専門的な経験や思考の蓄積が、出版社にとって価値ある「コンテンツ」となるのです。
単なる知識の寄せ集めではなく、実践から得た独自の視点や解決策を持っていることが重要です。そういった「現場の知恵」こそが、読者にとって真に価値ある情報となります。
2. 出版企画書を作る能力がある
商業出版を実現させるために最初にぼくらがやることは「出版企画書を書く」ことです。出版企画書がないと、出版社は何をしていいかわからず、著者の意図も伝わりません。出版企画書を通じて自分のコンテンツの価値を的確に伝えられる人は、商業出版の成功率が高くなります。
優れた出版企画書が書ける人は、「誰に」「何を」「どのように」伝えるのかを明確にし、市場のニーズを理解しています。読者層を具体的にイメージし、その読者が抱える問題や悩みを解決する本であることを説得力を持って提案できます。
3. 自分で本を売る意欲と能力がある
商業出版では、著者自身も積極的にプロモーション活動を行う必要があります。本は著者が先頭に立って売らなければならず、SNSやブログ、メディアイベントなどを活用して読者との接点を増やすことが重要です。
自分の本の価値を語れる人、情熱を持って読者に届けようとする人は、商業出版後の成功確率も高くなります。出版はゴールではなく新たなスタートと捉え、継続的に本の価値を伝える活動ができる人が成功します。
4. 出版業界の常識を理解している
出版業界の「常識」は一般には知られていません。出版社のやり方と流れを踏まえていないと、たとえいいコンテンツでも採用されづらくなります。出版のプロセスや業界の仕組みを理解している人は、無駄なく効率的に商業出版へのプロセスを進めることができます。
商業出版を実現できない人の特徴
1. 専門性や経験が浅い
特定の分野での経験が浅く、独自の視点や方法論を持っていない人は、商業出版の実現が難しいでしょう。書籍の内容が一般的な情報の寄せ集めになってしまうと、出版社や読者にとっての価値が見出しにくくなります。
2. 出版企画が明確でない
出版企画書を作らずに「出版したいんです」と言うことは、「何も商品を持っていない飛び込み営業」のようなものです。何を伝えたいのか、誰に届けたいのかが曖昧な人は、出版社の興味を引くことができません。
3. 自費出版との違いを理解していない
最近は商業出版を専門にやってきた出版社が自費出版に手を出し始めており、「企業出版」「プロジェクト出版」「ブランディング出版」などと呼ばれることもあります。これらの違いを理解せず、高額な費用負担に気づかないまま契約してしまう人もいます。
自費出版では、出来上がった本を著者が買い取るという形式で行われ、著者が3000部程度(500~700万円)を出版社に支払うケースもあります。本当の商業出版と自費出版の違いを理解できていない人は、思わぬ出費を強いられる可能性があります。
4. プロモーションの重要性を理解していない
「先頭に立って売る」という意味を99.99%の著者は誤解しており、結果的にプロモーションが失敗しています。本の内容だけで売れると思い込み、積極的な販促活動をしない人は、たとえ出版できたとしても、その後の売上に苦しむことになるでしょう。
今、商業出版に向けて行動すべき理由
商業出版を目指している人が今すぐ行動しなければいけない理由は、単純に「間に合わなくなる」からです。サラリーマンがフリーランスになる流れが加速し、出版したい人(ライバル)は増える一方で、出版社の採用基準は年々厳しくなっています。
ぼくの感覚では、出版社の今後のビジネスモデルは、①実績がある著者の「手堅い本」を出版する、②著者に費用負担を求める「商業出版っぽい自費出版」の二つが中心になっていくと予想されます。そのため、実績のない新人著者が純粋な商業出版を実現できるチャンスは、時間の経過とともに減少していくでしょう。
まとめ
商業出版を実現できるかどうかは、専門性と経験、出版企画の質、業界理解、そしてプロモーション能力によって大きく左右されます。これらの要素を兼ね備えているか、または積極的に学び身につける意欲がある人だけが、商業出版という夢を実現できるのです。
単に「本を出したい」という願望だけでなく、出版プロセスを正しく理解し、読者に価値を届けるという強い意志を持った人こそが、商業出版の扉を開くことができるでしょう。今こそ行動を起こし、あなたの専門性と経験を世に問う時かもしれません。