こんにちは、木暮太一です。ぼくは出版塾を主宰しており、これまで数千名の著者と関わってきました。19歳から作家、出版社も2004年から経営している出版業界人です。
長年、多くの著者と編集者を見てきましたが、著者のアピール方法がだいぶズレてると感じています。著者はがんばってアピールするんですが、それが編集者にまるで刺さっていないんです。というよりむしろ、編集者の評価を下げてしまうようなことを語ってしまう著者がとても多いです。
間違ったアピールをしてしまうと出版できなくなっちゃいます。なので今回の記事では、何がいけないのか、どうしたらいいのかを解説していきますね。
Youtubeで動画にて解説もしていますので、動画が便利な方はこちらからどうぞ↓
今回は、著者がやってしまいがちな「間違った自己アピール方法」に関して話をしていきます。著者は、出版社や編集者に認められたいと思っていろいろアピールします。
でもこのやり方が、変な方向に行ってしまうケースが多々あるのです。いくつか【あるあるの失敗事例】ありますので、説明します。
あるあるの事例のうちまずご紹介したいのが「オンリーワンですアピール」。
要は「こういうことをやっているのは私しかいません」「このジャンルでこういうことを知っているのは私しかいません」というアピールですね。
これは正直、意味がありません。むしろ逆効果になります。
出版業界では、過去の実績を参照して、その新しい企画が売れるかどうかを判断しています。そんな側面が非常に強い業界です。「こういう本が出ていました」「それぞれどのくらい売れていました」ということを実売データやPOSデータを使って調べます。そしてそのデータを参照して、新しい企画がどれくらい売れそうか判断しています。
ですから
「こういうのは私しかやっていません」
と言ってしまうのは、
「参照データがありません」
すなわち
「出版社としてその本が売れるかどうかの判断ができない類の本です」
と言っているのに等しいんですよ。
そして出版社からは「判断できないから本にはできません」と言われてしまうわけで、全く意味がないというよりむしろ逆効果になってしまうんですね。ですから、「オンリーワン」アピールはやめましょう。
【あるあるの失敗事例】の2番目は、「ユニークな掛け合わせをアピールする」です。
「『〇〇な性質』と『△△の特徴』を持ち合わせている人は私しかいません」といってしまうケースです。例えば、「幼稚園教諭ですがトレーダーです」などと異色さをアピールする人がいます。格闘技界でも「K1のチャンピオンがFXのトレーダー」という異色な経歴が注目を集めたりします。
しかし、出版業界においては評価されません。ユニークな掛け合わせは、ほぼどうでもいい話なんです。本の場合、自分が本に書くテーマだけ詳しければいい。
例えば体育の本。足が速くなるとか、体が健康になるとか、いろいろな手引書がありますけれども、それに関して詳しければそれで十分です。昔、ぼくの高校に、「歌って踊れる体育教師です」という体育の先生がいました(実際に歌って踊っているところは見たことがないのですが)。
ただ、もし彼が体育の本を書くとしたら、歌って踊れるという要素は正直どうでもいいし、体育の本の中に「歌い方」「踊り方」の要素を入れこんじゃったら逆にマズいです。
筋トレやダイエットをしたくて、そのエクササイズ専門家の本を開けたら、「じゃあ、こういう風に踊りましょう」「余談ですけれども、私はこう踊ります」とか書いてあったらイヤじゃないですか? 情報として邪魔ですよね。その人とリアルで会うときには楽しい人かもしれません。でも、エクササイズの本の中では要らない情報です。
FXトレーディングの本を買った人には、著者が幼稚園の先生かどうかは関係ありません。FXのことを知りたくてこの本を買ったのに、幼稚園の話は要りませんよね? FX以外の話はしてくれるな、と思うのではないでしょうか。
本から得られる情報は、その本の切り口に特化してください。ということで、「キャラの組み合わせが珍しい」とか、「こういう人は他にいない」というアピールはやめた方がいいと思います。「歌って踊れる体育教師」的な表現は、出版業界からすると、苦笑いにしかなりません。
冒頭にも言いましたが、出版業界というのは、そのジャンルで過去に売れた本の成績を参照して、今回新しく提案されたこの企画がどれくらい売れるか、ということを判断しています。
出版社の発想を邪魔するようなキャラのつけ方はマイナスにしかなりません。ぜひそこは気をつけていきましょう。