商業出版の企画を作るとき、編集者が特に気にするポイントがあります。それが「差別化」です。類書(すでに出版されている同ジャンルの本)と比べて、何が違うのか、どう違うのかをとても気にします

ぼくは(おそらく)日本で一番大きい出版塾を主宰して、商業出版をプロデュースしています。これまで1500名以上の受講生をコンサルし、数千の出版企画を見てきました。受講生が編集者と話したとき、特に突っ込んで聞かれるのがこの「差別化」です。

そりゃそうですよね。同じ内容の本を出しても仕方ないわけで、新しく出すのであれば、差別化が必須なわけです。そして、著者にも頻繁に問いかけます。「差別化ポイントはどこでしょうか?」「差別化できるところを打ち出したい」。

編集者から差別化について問われるので、著者も差別化を強く意識するようになります。しかし、ここでほとんどの人が間違えます。

差別化=「こんな本、今までなかった」と思ってしまうんです。つまり、これまでになかったような内容、切り口が差別化だと思ってします。

これは大きな誤解です。たしかに、これまでにあった本と同じ内容では、差別化にはなりません。でもそれは、「これまでになかったテーマであればいい」ということじゃないんです。

これまでになかった本が差別化になるのであれば、とことん変なテーマを選べばいいだけです。たとえば、『千葉県船橋市小室町の歴史』とか(ぼくの生まれ育った町です笑)。これまで、小室町の歴史をピンポイントでつづった本は出ていないでしょう。なので「今までなかった本」です。ですが、これではいけないのはすぐわかりますよね。誰も、この本を読みたがらないんです。そこで生まれ育った朴ですら、特に興味ないです。

これは極端な事例ですが、もう少し一般向けに考え直すと、多くの人がやっちまってるミスと同じ内容になります。

「こんな切り口は今までなかった」
「アドラー心理学の本はあるけど、ユングを小説仕立てで解説した本はこれまでない」
「筋トレの本はたくさんあるけど、筋トレしながら勉強する本は出ていない」

などなど、「これまで誰もやっていない!」というアピールを一生懸命しようとします。

でも違うんですよね。当たり前ですが、大事なのは「これまで誰もやっていないこと」ではなく「読者が選んでくれること」のはずです。これまでにない本だから買うわけではありません。読者は自分が欲しいから、自分に必要な情報だから買うんです。

それを忘れてはいけません。

差別化は重要です。しかしそれは「これまでになかった本」という意味ではありません。本当の差別化とは、「これまでの本で解決できていない悩みを解消すること」です

「これまでいろんな本を読んできたけど、私がモヤモヤしている悩みは誰も解決してくれなかった。」

という人に向けて、「この本なら、あなたの悩みが解決されますよ」と伝えるのが差別化です。取り残されていた悩みを解消することが差別化であって、誰も書いてこなかったテーマを書くことが差別化ではありません。そんなことは正直どうでもいい。

出版企画に限らず、差別化を打ち出そうとして完全に的外れな方向に進んでしまっているケースが多々あります。とてももったいないですね。表現や字面に惑わされず、結局のところ何が求められているのかを捉えるようにすると、正しい努力ができるようになりますね。


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