こんにちは、木暮太一です。今日は著者の権利について書いてみます。ぼくは長年、商業出版へのアドバイスをしてきました。これまで多数の著者に会ってきましたが、多くの方が「著者の権利」を誤解しています。そして、損をしています。

著者は自分の権利の範囲を知らなければいけません。本当は権利があるのに知らずに放棄してしまっていることもありますし、逆に、そんな権利ないのに我が物顔で主張しちゃってるケースも見受けられます。

たとえば、こんなこと(↓)。これらの権利を著者は持っていると感じますか?

1)タイトルを決める権利
2)自分の本のデザインを決める権利
3)本の値段を決める権利
4)自分の本を電子化する権利
5)自分の本の原稿を自分のブログに転載する権利
6)似たような本を出す権利


どうでしょう? 一つずつ考えてみてください。

タイトルは著者が決定できるのか? それとも出版社が著者に無断で決めていいのか? 本の価格は? デザインは?

また、著者がある本と全く同じテーマのを別の出版社から出していいでしょうか? もしこれがOKだとすると、同じような本を複数の出版社で出せることになりますが、著者がそんなことやってもいいのでしょうか?

いかがでしょう? ぜひ考えてみてください。

著者がやっていいこと、悪いこと


では答えです。最初に結論を言います。

1)タイトルを決める権利
2)自分の本のデザインを決める権利
3)本の値段を決める権利

これらは著者に権利はありません。著者も意見を言っても構いませんが、出版社が決定権を持っています。

4)自分の本を電子化する権利

これは、著者・出版社の両方が権利を持っているというか双方が合意しないと、電子書籍として出すことはできません。

5)自分の本の原稿を自分のブログに転載する権利
6)似たような本を出す権利

この2つは、著者が権利を持っています。特段の契約条項がない限り、ある意味、著者が勝手にやっていいことです。

解説編

いかがでしょうか? 事前に想定していた答えとバッチリ合いましたか?

本のタイトル、デザイン、価格など、書籍そのものについては最終的に出版社が決定権を持っています。
それは、書籍を作るのに出版社がお金を負担しているからです。著者のコンテンツと言えどもお金を出資しているのは出版社なので、出版社の意見が最終意見になります。

しかし電子書籍は違います。最近は出版契約書に「電子書籍を出す権利も出版社に渡す」という条文が入ってきましたが、電子書籍を出す権利に関しては、長い間うやむやになっていました。
紙の本はうちで出すことに同意したけど電子書籍については別だからまた別途協議が必要ですね、という認識を出版社が持っていたんです。だから「お互い合意できたら」なんです。

とはいえ、紙の本を出した出版社で、そのまま電子書籍を出すことが通常ですし、わざわざ別の出版社で出す必要もないので、ほとんどの場合は問題なく「合意」するはずです。


そして、おそらく多くの方が誤解しているのが「転載」と「同ジャンルの本」じゃないかと思います。先ほども書きましたがこの2つは著者がやっていいことです。自分の本の中に書いた原稿を自分のブログに使うことができます。
また、ある出版社で出した本と同ジャンル、同テーマの本を別の出版社から出すこともできます。

出版契約書には「内容が告知した本は別の出版社から出版しない」という条文が入っていますが、これは「全く同じテーマを、まったく文章で出すな」という意味合いに近いです。実際、本屋さんには同じ著者が書いた、似たような本が並んでいますね。同じようなテーマの本を別の出版社で出してもいいんです。

ただ、権利関係としてOKなのと、心情的に問題ないのとは違います。これをやることで編集者との関係が悪化することも十分ありますので、その点は注意が必要です。

大事なのは、誰がどんなことに対して最終決定権を持っているかを正しく把握することです。そして、相手との関係性を壊さないように配慮しながら自分がやりたいことを進めていくことかなと思います。

今回はここまで。最後まで読んでくれてありがとうございました。