はじめに
こんにちは、木暮太一です。
今日も「出版の裏側」についてお話ししていきます。
今回のテーマは――
「出版社が倒産したら、出版予定だった本はどうなるのか?」
少しシビアな話かもしれませんが、今後同じような状況は必ず増えていきます。
出版を考えている方、出版に関わっている方にとっては、他人事ではない話です。
秀和システムさんの倒産
先日、長い歴史を持つ出版社「秀和システム」さんが、事業継続困難(事実上の倒産)という発表をしました。
この発表により、今後出版されるはずだった本、進行中だった企画がすべてペンディング(保留)になったということです。
実はこうしたケースは今回が初めてではなく、今後さらに増えていくと考えています。
本記事では、このような出版社の倒産時に著者や出版予定だった本がどう扱われるのか?についてお話しします。
倒産時に本はどうなる?3つのパターンに分かれる
まず出版社が倒産したとき、本の状態によって次の3つのパターンに分けられます。
- 既に出版されている本(既刊本)
- これから出版予定だった本(新刊本)
- 企画中で、まだ本としての作業が進んでいないもの
順番に説明していきます。
① 既刊本(すでに出ている本)
すでに流通している本ですね。
これについては、売れていれば次の出版社が引き継ぎますが、売れていなければ絶版扱いになります。
つまり、新たな印刷・出荷はされず、在庫が戻ってきたら断裁処分されるだけ。
売れているかどうかが命運を分けるわけです。
出版業界では、安定して売れ続ける本=「美味しい商品」です。
一方、たまにしか売れない本は「コスト」でしかない。
引き継ぐ出版社にとって、そのコストを受け入れる理由がないんです。
② 新刊本(これから出版される予定だった本)
こちらは一番微妙な立ち位置になります。
著者が原稿を書き終えて、編集者も関わり、装丁も決まって、
あとは印刷するだけ!という状態であっても、引き継がれない可能性が非常に高いです。
なぜかというと、元の出版社A社は経営に失敗した会社です。
そのA社が「これは売れる」と思ったコンテンツでも、
新しく引き継ぐ出版社B社にとっては“魅力がない”と判断されることが多いからです。
さらに、印刷代・紙代などのコストがB社に発生するという問題もあり、
「売れるかわからないものにコストをかけたくない」と判断されやすいんですね。
③ 企画中(まだ何もできていない状態)
意外かもしれませんが、一番出版される可能性が高いのはこのパターンです。
なぜなら、まだ何も形になっていない分、
引き継ぎ先の出版社B社の方針に合わせて、内容をアレンジしやすいからです。
すでに完成している本は「そのまま出すか出さないか」の二択ですが、
企画段階であれば「こういう読者層に変えよう」「構成を少し調整しよう」といった柔軟性があります。
出版社B社にとって“育てやすい素材”であることがポイントです。
引き継ぎの実態とリアルな事情
「全部引き継がれるんでしょ?」と思われがちですが、現実はそんなに甘くありません。
編集者が担当していた企画を転職先に持っていっても、受け入れられないケースがほとんどです。
過去に引き継ぎがうまくいかなかった事例も数多くあります。
「これから出版するはずだったのに……」
「もう完成間近だったのに……」
という企画ほど、逆に引き継がれにくいという現実があります。
出版社の中はパニック状態
倒産が外部に発表されるタイミングでは、社員でさえまだ知らされていないことが多いです。
まさに「寝耳に水」状態。
その後、著者・印刷会社・デザイナーなどから
「どうなってますか?」
「お金は払われるんですか?」
という問い合わせが一気に来て、社内はパニックになります。
出版業界の未来は明るくない
残念ながら、今後このようなケースは確実に増えていきます。
出版業界がV字回復するとは到底思えません。
YouTubeやAIの登場で、本の役割は相対的に下がってきています。
情報を得る手段として、「本」ではなく「AI」や「動画」が主流になりつつあるからです。
だからこそ、早く動くしかない
出版を考えている方へ。
「来年でいいかな」では間に合いません。
「2年後に落ち着いたら」と考えていると、もう遅いんです。
出版には“勝負時”があります。
それを逃してしまうと、もうリカバリが効かないということも多い。
今のうちに動くしかないんです。
まとめ
- 倒産した出版社の本はすべてが引き継がれるわけではない
- すでに出ている本は「売れているかどうか」が生死を分ける
- 新刊(完成間近)の本は意外と厳しい立場に
- 企画段階の本は、引き継がれる可能性が比較的高い
- 出版業界の未来は厳しいからこそ、早めに動くことが重要
出版社が倒産したとき、
「本そのもの」や「著者の努力」が必ずしも守られるとは限りません。
しかし、だからこそ今できることを早めに行動に移すことが求められます。
出版には“タイミング”があります。
それを逃さないためにも、あなた自身の「動き出す力」が大切です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
それでは、また次回の記事でお会いしましょう!
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