ひと口に商業出版を目指すと言っても、やらなければいけないことはたくさんあります。そしてみんながぶつかる壁もたくさんあります。多くの人がこの壁を乗り越えられず、もしくはこの壁の存在にすら気づかず、出版を実現できずにいます。

どんな壁があるか、そしてぼくの講座ではその壁を乗り越えるために、どんなアドバイスをしているかを解説します

◆商業出版をする上でのハードル

商業出版へのステップは全部で3つです。

1)出版企画書を書く
2)出版社(編集者)にアプローチする
3)編集会議を通す

この3つです。この3つのステップをクリアすれば出版が実現します。逆に言えば、この3つさえクリアすればいいわけですが、どうすればクリアできるかわからない、何をすればいいかわからないという方が大半だと思います。

順番に説明していきましょう。

1)出版企画書を書く

まずは最初のステップ「出版企画書を書く」というステージです。ビジネスでも企画書を書くことはあります。仕事で企画書を書いたことがある人であれば、それほど難易度は高くなさそうです。が、ほとんどの著者さんが書けません。

ここでぶち当たる「壁」をいくつか分解して解説します。

1-1)自分の理論・ノウハウの解説になっちゃう
自分の本の出版企画書を書く際に、自分の理論やノウハウの説明ばっかりになってしまうケースが非常に多いです。特に思いが強い人、自分のノウハウに自信がある人ほど、この傾向が強くなります。

自分の説明書になっちゃう感じです。「私はこういうことが書きたい」「私のノウハウは唯一無二です」という想いは大事なんですが、それを企画書に書いてもあまり意味がありません。というのは、本は自分の説明書ではなく、「読者の役に立つもの」でなきゃいけないからです。

1-2)何を書けばいいかわからない
出版企画書って、何を書けばいいかわかりますか? 企画書といっても、一般のビジネスで用いるような企画書ではありません。まずフォーマットが違います。

一般的に、ビジネスの企画書はパワポで作成しますね。でも出版業界では、パワポは使いません。なので出版企画書もパワポで作ってはいけません。

また、一般的にはビジネスの企画書は「企画の背景」や「社会情勢の解説」を前段で記載します。こういう意図で今回の企画を提案します的な導入が必要なんです。

でも出版企画書ではそんなのはいりません。というか書いたらNGです。そんな情報は求められていません。なので読んでもらえません。(その他にも、いわゆるビジネスの企画書と異なる部分はたくさんあります。)

では何を書けばいいのか? どんな内容にすればいいのか? それがわからないと、トンチンカンな企画書になってしまいますね。

1-3)書くことがそれほどない
本にしたい内容を企画書に落とし込むときに、「思っていたより、書く内容がない」と感じて途中で手が止まってしまうことがあります。資料を作る前は、あんなことも、こんなことも書きたい、書けることはたくさんあると感じていても、いざ紙に落とし込んでみるとなかなかコンテンツが出てこないということはよくあります。

実際、出版が決まった著者も原稿を書き始めてみるとすぐにコンテンツが尽きてしまうことがあります。1冊分の文章量(文字量)を書くことができないんです。本は最低でもこれくらいは書かないといけないという感じの目安文字量があります。それを埋められずに途中でギブアップする著者が少なからずいます。

編集者はそういう著者がいることを知っているので、企画書の段階である程度のコンテンツ量がない著者とは話を進めません。つまりぼくらは「わたしはたくさんネタを持っていますよ」ということを企画書で編集者に伝えなければいけません。

そしてそれ以前に、自分の中にある言語化できていないコンテンツを発掘する必要があります。

1-4)何を求められているかわからない

出版もビジネスです。出版社とのやり取りも「ビジネス」です。そして、本は作品ではなく、読者に買ってもらう「商品」です。なので、相手が求めていることを企画書に表現しなければいけませんね(本も、自分が言いたいことをまとめるのではなく、読者が求めていることに焦点を当てないといけませんね)。

とはいえ、編集者が何を求めているかわかりますか? これがわからないんです。「面白いものを求めている?」 いえ、ちょっと違います。「今までになかったような本を求めているでしょ!」 いえ、それはだいぶ違います。「有名な人の本を求めてるよね」 それも誤解ですね。

結局のところ、ほとんどの著者は編集者(出版社)が求めている内容を知らずに企画書を書いています。そして、かなりの確率で方向性がズレています。だから一生懸命書いても採用されない、いつまでたってもいい返事がもらえないという事態になっちゃうんです。

2)出版社(編集者)にアプローチできない

2番目のプロセスは、出版社へのアプローチです。感覚的にはここが一番大きなハードルかもしれません。

2-1)編集者に出会えない

本を出版したいなら、自分の本を出してくれる出版社を探さなければいけません。でもどうやって? それがわからないんですよね。なので、ほとんどの人は、先輩著者から紹介してもらったり、編集者が来るパーティに行ってみたり、とにかく編集者と会う方法を考えますね。ただ、やってみるとわかりますが、このやり方は無駄な努力に終わるケースがほとんどです。

ブログを書いて編集者からの連絡を待つという方法もありそうです。もちろんそれも可能性としてはあり得ますが、いつ連絡が来るかわかりませんし、ずっと連絡が来ないかもしれません。自分から能動的にアプローチできなければ、運任せになってしまいます。作戦としてはかなり弱くなってしまいますね。

2-2)編集者にどう提案していいかわからない

編集者に会いに行くと想定しましょう。あなたは、編集者が集まる場所に行けることになり、そこで自分の企画を提案したいと考えています。でも、そこで何を話しますか? どんなふうに声を掛けますか? それがわからずに、結局一言も話せずに帰ってくる著者も多くいます。

ブログを書くケースも同じです。ブログを書いて編集者から声をかけてもらうのを待っています。とはいえ、何でもいいからブログを更新すればいいというわけではありませんね。自分が考えていることを雑記風にまとめても、編集者から声がかかる可能性はかなり低いと言わざるを得ません。

2-3)編集者との打ち合わせで何を話していいかわからない

編集者に会えたとしましょう。でも編集者に会うということは、ビジネスでいえば打合せ(商談)の場をもらえた、というだけです。商談が決まったからと言ってビジネスが成立したわけではありませんね。「編集者と会える」となると、多くの人が舞い上がってしまいます。あたかも自分の企画が認められたと思ってしまう、なんなら先方は乗り気で、すぐにでも私の本を出したいと思ってる! と考えちゃいます。そして、もう出版決定したかのような雰囲気で会いに行ってしまいます。そして撃沈して帰ってくるんです。

何がいけないのか? 編集者にしっかり提案できなかったのがいけないんです。編集者との打ち合わせは、就活でいえば「一次面接」です。一次面接に呼ばれただけで「企業から認められた! もう内定だ!」と誤解する人がいたら、おそらくその面接はうまくいかないでしょう。面接を通過するように、自己アピールをしたり、志望動機を準備して臨みますよね。

編集者に会う時もそれと同じです。編集者との打ち合わせに際して正しい準備をして正しくアピールしなければいけません。

3)編集会議が通らない

出版企画書が書け、編集者に会うことができました。そして編集者も気に入ってくれて社内の決済をあおぐ「編集会議」に出します。この編集会議を通過すれば、あなたの本が出版決定となります。

とはいえ、当然ながら会議に出されたすべての企画が通過するわけではありません。編集者がOKを出しても、経営者や営業部から反対されてボツになるケースも多々あります。なので、編集会議にも準備して臨まなければいけないわけですね。

ただ難しいのは、編集会議に著者は出席できないということです。出版社内の会議ですから部外者である著者が参加することは不可です。編集者に代わりにプレゼンしてもらわなければいけないんです。

3-1)編集者に売りポイントが伝わらない
編集者が十分な材料を持ってプレゼンできればいいのですが、なかなかそうもいかないです。事前にみっちり編集者と打ち合わせできることばかりではありません。編集者も忙しいので、通るか通らないかわからない企画にそれほど時間をかけることができません。場合によっては、とりあえず編集会議に出して、通過した場合にのみ著者と会うと決めている編集者もいます。これだと著者が考えている企画内容が十分に伝わらないうちに編集会議に出されてしまうことになりますね。

3-2)類書が売れていないと言われてしまう

編集者に内容を伝えることができても、編集者が企画のおもしろさを十分伝えることができても、会議でNGになることはあります。それは「類書が売れていない」というケースです。出版業界は、類書(同ジャンルの本)の実績を見て、その企画を採用するかどうかを決めます。もちろん100%類書の実績に従うわけではありませんが、かなり大きな決定要素になります。

これ、すごく面白いんです! と熱を込めてプレゼンしたとしても、営業部から「でも類書が売れてないんですよね。そのジャンルは厳しいですよ」と言われてしまう。営業部からしたら、いくら面白さを強調されても類書が売れてないからNGとしか言えなくなります。もはや、企画のおもしろさは関係なくなっていますね。

こう言われて「営業部がこう言っているから仕方ない」とあきらめてしまう編集者はかなり多いですし、著者としても「打つ手なし」になっちゃいます

3-3)買い取りを要求されてしまう

編集者はいいと思ってくれている、営業部の反応も悪くない。それでも企画が素直に通らないことがあります。出版社としては、「よさそうなんだけどなぁ、でもちょっとリスクが高いかもなぁ」と悩んでいる感じです。その時に提案されるのが「著者買い取り」です。だいたい1000~3000部、金額にして150万円~450万円程度を払ってくれたら企画を通せる、と言われることがあります。

じつはこの買い取り要求が非常に増えていて、新人著者が普通に企画を提案すると、結構な確率で買い取りを求められます。そして、ほとんどの著者は買い取りをして出版するか、断って出版をあきらめるかの2択になっています。

要は、買い取り要求をされた時の対処法がわからないので、100%受け入れるか・100%拒否するかしかないわけです。

◆ぼくの講座で何をしているか?

いかがでしょうか? いろんなところに乗り越えなきゃいけない壁がありますよね。さらに言えば、これらの壁をすべて認識していた方はほとんどいらっしゃらないと思います。見えていない壁は対処のしようがないので、そこで試合終了になってしまいます。

ぼくの講座では、それぞれの壁の説明をさらに詳しく解説して、それぞれの対処法を教えています。

<出版企画書を書くステージ>
・出版企画書はどんな体裁で書くのか?
・出版企画書に盛り込む内容はどんなものか?
・編集者は出版企画書のどこを見ているのか?
・どんな要素を書くと、「捨てられずに読んでもらえる企画書」になるのか?
・編集者に採用される企画書にするための書き方
・自分のノウハウを言語化する方法
・コンテンツをさらに発掘し、「ネタ切れ」を防ぐ方法
・自分目線から抜け出して、相手が求めている内容を探す方法

<出版社にアプローチするステージ>
・自分の企画を採用してくれる編集者をどうやって探すか
 (誰かの出版パーティに参加したり、異業種交流会に参加する必要はありません)
・自分にマッチする出版社の見つけ方
・編集者に自分の企画を持ち込む方法
 (いわゆる営業は不要です。飛び込みで企画を出版社まで持参することもありません)
・編集者に自分の企画のウリをわかりやすく伝える方法
・編集者が「面接」の場で何を求めているかを事前に知り、準備しておく段取りについて
・編集者との「面接」を成功させる方法

<社内の編集会議を通すステージ>
・編集者が企画のウリのポイントを社内で端的に表現するために、どうすればいいか
・編集長や営業部などから反対が出ないようにするために事前にできること
・編集会議で「ぜひこの著者の本を出そう!」と言ってもらえるプロフィールの作り方
・営業部が一番評価するポイントを理解し、その準備をする
・「この著者の本を出したら売れそう」と思ってもらうための施策
・「2000部買い取ってください」と言われなくなる話の持って行き方
・メディアから取材を受ける方法
・本をメディアに取り上げてもらう方法

こんな話をしながら、受講生を商業出版へと導いています。

ぼくが出版業界に携わってから25年以上がたちました。最初は著者としての活動でしたが、そのあとに出版社の事業責任者として営業、広報、マーケティング、広告の実務をやってきました。勉強のために、書店さんで無償で働かせてもらったこともあります。なので書店さんの現場も体験済みです。

出版社をゼロから2社立ち上げ、出版にかかわるすべての業務をこなしてきました。何なら出版社の経理もできます。すべてのパートを見てきたからこそ、すべての壁が見えています。そしてその壁をどう乗り越えればいいかも見えています。

本の書き方がわかる、コンテンツの作り方がわかる、売り方がわかる、メディアへの出し方がわかる、編集者が望んでいることがわかる、営業部が考えていることがわかる、出版社の経営者が見ているものが見える。

ぼくが25年間以上の経験から得たノウハウを、皆さんにお伝えします。